2020年06月11日

プロジェクトぴあの

ステイホームで読書をしました。
山本弘 著「プロジェクトぴあの」(早川文庫、上巻・下巻)。
近未来SF小説です。

先ずは、ネタバレしない程度にあらすじを書きます。

語り部役の少年「すばる」と、主人公の少女「ぴあの」が、2025年の秋葉原で出合います。
すばるは、心も体も男性で、服装とメイクだけ女装する、いわゆる「男の娘」。
ぴあのは、女の子で、アイドルグループの一員。二人を結ぶ共通点は、科学。
すばるは、大学で電子工学を専攻していて、ぴあのは、独学で量子物理学を学んでいます。
しかし、ぴあのの場合は、単なる趣味の科学オタクなんかではありませんでした。
ぴあのには野望がありました。それは、宇宙に行くこと。
それから、いろいろあって、10年後の2035年までの物語です。

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秋葉原、アイドル、オタク、テクノロジー、科学、政治、宗教、宇宙・・・
近未来の世界がどうなっているのか、面白い要素がいっぱいです。

SFは、科学的な嘘を書くことで成り立つ物語なのですが、山本弘さんのSFは、その嘘が、SFのお約束としての嘘ではない、本当に立証可能な仮説なんじゃないか? と思わせるくらい、科学的(論理的)に説得力があるのです。物語の中盤に「みらじぇね」というエントロピー(熱力学第二法則)を破る発明品が登場します。つまり、エネルギーは、不可逆的に分散していくわけですが、それが逆行する装置です。そういう理論構築が面白いのです。

今、現実の世の中では、新型コロナウィルスが猛威をふるっています。
この物語では、2031年、地球に、大事件が起きます。
科学技術で築き上げた、現代の社会インフラに、大転換が起きる自然災害です。
ネタバレになるから詳しくは書きませんが、そのヒントは「コロナ」です。

物語の終盤、エンジニアとして登場する人物の名前が「榎」です。
それなりに重要な良い役で登場させていただいています、ありがとうございます(^^;)

もちろん、結末はネタバレになるから、何も書けません。
しかし、物語でもヒントとして書かれている「サイハテ」の動画を貼っておきます。


 
 
 
 
 
 
 
 

 

 
 

posted by eno at 17:05| 読書 | 更新情報をチェックする

2019年03月25日

かくかくしかじか

漫画「かくかくしかじか」東村アキコ(集英社)全5巻を読みました。
東村アキコさんご自身の、美大受験から漫画家に至るまでの実体験を描いた作品です。
描かれている登場人物も、美大も、出版社も、全てが実話(ノンフィクション)です。
同じような体験をした者にはわかる(肌感覚で共感できる)リアルさ、懐かしさがあります。
面白くて、胸を打つ、とても良い作品でした。美大受験を体験した人も、していない人も、皆さんにお勧めします。
※「かくかくしかじか」は、2015年、第8回マンガ大賞、第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞しています。

このようなテーマの、美大受験の部分を、もっと一般化し、難易度も上げて、受験あるあるエピソードや、受験名言格言を掻き集めて、盛って、エンターテイメント化すれば、もっと面白いフィクション作品が作れるに違いないと、きっと誰もが考えることでしょう。
私自身も、浪人を経験して東京藝大に合格し、予備校で芸大美大受験生を教え、東京藝大で芸大生も教えましたから、面白いエピソードの引き出しはたくさん持っています。それを本に書いたり、漫画化したら、きっと面白いだろう、とはずっと思っていましたから。
例えば、最近話題になっている「ブルーピリオド(山口つばさ)」という漫画があります。
あれも、芸大受験の話らしいです。要するに「かくかくしかじか」の二番煎的? なコンセプトです。私は1巻の冒頭を立ち読みしただけなので、あくまでも推測でしか言えませんが、もし読み進んだとしてもフィクションである以上は、「盛りすぎ、カッコつけすぎ、逆に浅い」みたいな感想になるかも知れません(笑)
ただ、読んだ人たちの多くが面白いと評価しているので、きっとエンターテイメント性の高い優れた作品には違いないでしょう。

「かくかくしかじか」は、作者の極めて個人的な体験と、ほのぼのとした長閑な環境、それら矮小でゆるい世界観がリアルなのです。演出過多にならない、ゆるい現実感です。だって、実際に、大学生活って、ゆるいのです。

しかし、芸大美大受験は、事実として、とても厳しいです。特に私も体験した1980~90年代の東京藝術大学の油画科・デザイン科の受験倍率は、40倍を超えていました。美大受験生にとっての東京藝大合格を、何か別のものに喩えるなら、高校球児にとっての甲子園出場みたいな感じです。そこに青春の炎を燃やし、燃え尽きます。
甲子園は、アマチュア野球の目標(ゴール)です。そこからプロ野球に進めるのは、更に一握りになります。だから、プロに進まなかった高校球児にとっては、甲子園出場は、自分の人生においての一つの頂点かも知れません。しかし、プロに進んだ選手にとって、それは一つの通過点ですし、べつにそこを通過しなくたって、他のルートでも何でもいいのです。

東村アキコ『かくかくしかじか』インタビュー【後編】
 
posted by eno at 14:04| 読書 | 更新情報をチェックする

2018年07月10日

機会費用と御縁

読書の話ですが、今更ながら中上健次を読みました。
たぶん、自分には相性が悪いだろうと、読まずにそう決め込んでいました。
で、実際に読んでみると、やはり、思った通り相性が悪いのです。

先ずは「18歳」を読んで、18歳くらいの男の子は、精液ばっかり出しているのは、まあわかります。次に「19歳の地図」を読んで、公衆電話が、今だったらインターネットなのだろう、とか思ったりしました。それで、それなりに面白い部分もあるのですが、でも、もういいと思いました。しかし、もう一つだけ読んでみようと思って「千年の愉楽」を読み始めました。ところが、ちっとも読み進まなくて、誰にも感情移入できなくて、途中で読むのをやめました。

だったら感想を書く必要も無いのですが、ただ、単に面白くないからスルー、というのとも少し違います。もしかしたら、もう少し我慢して読めば面白いのかも知れない、とも思うのです。しかし、結論としては、読まなくていいと判断しました。それが「相性が悪い」ということなのです。

本を読むには、それなりに時間を費やします。もし、この本を読まなかったら、その機会費用を別の何かに交換できます。でも、それは読んでみなくちゃわからないことなのです。ですから、それらは全て御縁なのです。
 
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posted by eno at 00:08| 読書 | 更新情報をチェックする

2017年07月01日

詩羽のいる街

山本弘さんの小説「詩羽のいる街」も紹介しておきます。
SF作家として有名な山本さんが、2008年に書いた、最初のSFではない小説です。2008年は、日本でiPhoneとtwitterとFacebookが開始した(未だ普及していない)年で、その頃はテレビだって未だブラウン管だし、アナログ放送の時代です。だから、スマホではなく携帯電話です。SNSではなく2ちゃんの掲示板やブログです。でも、オタクやネット界隈の現象は、その後の10年を先見したように描かれています。

第一話~第四話まで、全部で四話、四人の登場人物の視点で語られます。
美大を出たばかりで、漫画家を目指している青年。自殺しようとしている、女子中学生。正体を隠してネットを荒らしたり、悪さをする男。最後の一人はネタバレになるので正体を明かせませんが、出版社関係の女。一つの地方都市で、偶然に係わり合う彼らと、その他にも何人もの登場人物が絡み合っていて、それらの中心には、常に詩羽という名の女性がいます。

詩羽がどこから来て、どこへ行くのか? 詩羽が何者なのか?
それらは殆ど説明されていません。でも、詩羽が今、何を考え、何をしているのかは、明確に説明されています。詩羽は謎めいているようでいて、合理的です。詩羽がやっている事は、見掛け上は複雑ですが、行動原理は単純明快です。特技ともいえる才能と、少々都合のいい運が味方していますが、現実的に実行が不可能ではないと思わせるアイデアに、目から鱗が落ちます。

読んでよかった、何かヒントを貰ったような、ポジティブになれる読後感です。
余談ですが、2013年に、百田尚樹さんが「夢を売る男」を書きましたが、そのアイデアが「詩羽のいる街」の中の一つのエピソードをヒントにしたのではないか? と思わせてしまうんですよね。オマージュってやつですか(笑)


posted by eno at 21:44| 読書 | 更新情報をチェックする

2017年06月24日

世界が終わる前に+君の知らない方程式

君の知らない方程式.jpg

山本弘さんの小説「BISビブリオバトル部・第三部・世界が終わる前に」を読みました。
つづけて、ウェブに特別掲載された最終巻「第四部・君の知らない方程式」を読みました、読了です。

★「 東京創元社のウェブページ(2017.02.28)

山本弘さんは、筋金入りのオタクですね、深い読書愛を感じます。そして、書きたいから書く、損得勘定なんて無いのです。BISビブリオバトル部シリーズは、自分が読んで影響を受けた本を、これでもかと紹介しています(他人の本を宣伝している事にもなります)。そして、読書を通して哲学することを説いています。若い人たちに、もっと本を読んで欲しい、そんなメッセージが込められているから、ライトノベルのスタイルで書かれています。普通なら、第一巻を試し読みで無料公開して、その後は有料にするはずですが、これは逆です。最終巻を無料公開しました(最後まで読んでくれたファンに最終回をプレゼントです)。

私は、そもそも最初から、考え方が山本さんとよく似ていて(原体験が似ているのかな?)共感点が多いのです。そして、山本さんの小説から多くの影響を受けました。「アイの物語」の主人公「IBIS」に惹かれ、アンドロイドをイメージした絵も描きました。どの作品を読んでも、知識が豊富です。更に、既存の価値観に固執せず、どんどん新しい流れに乗っていきます。

これまで「アイの物語」が一番好きだと思っていましたが、この「BISビブリオバトル部」を、もっと好きになりました。冒頭から主人公の空に惹かれ、話の展開にぐんぐん引き込まれて、あれこれ考えさせられ、そしてクライマックスに向って、感情が昂ぶりました。登場人物たちと一緒に、思春期に返って悩みました。

そして最後、最後の最後まで驚かされます。

過去記事リンク
★ 2017年05月30日「 2・幽霊なんて怖くない 」 ★ 2016年11月01日「 1・翼を持つ少女

あと、ついでと言ってはなんですが、先月観たSF映画の記事をアップし忘れていたので、フェイスブックの投稿をリンク貼っておきます。
★ 2017年5月19日「 映画「メッセージ」を観ました。
posted by eno at 11:19| 読書 | 更新情報をチェックする