2025年06月01日

わたしたちの怪獣

久永実木彦『わたしたちの怪獣』(創元SF文庫)を読みました。
単行本は2023年に東京創元社から、文庫は今年2025年の春に出版されています。

短編が4話収録されています。

1話目が表題作の『わたしたちの怪獣』で、これが一番面白かったです。

あらすじをちょっと紹介すると、主人公には妹がいて、家に帰ると、妹が父親を殺してしまっていて、どうしょう?と困っていると、東京に怪獣が出現したというニュースが流れてきて、じゃあ、怪獣のところまで父親の死体を持って行って捨ててこよう!ってことになって・・・
という奇想天外な発想なのですが、ぶっ飛んでいるようで、破綻なく綿密に練られたストーリーなのです。
著者自身が村上春樹が好きと言っているように、文章が村上春樹の影響を受けているっぽい比喩表現が多発しています(笑)
SFといえばSFなのですが、化学的というよりはオカルト的というか、ホラーっぽい怖さもあります。
怪獣が、なんかシン・ゴジラっぽいんです。
形態的にはもっと気持ち悪い変な形をしていて変な能力も持っているのですが。
おそらく、シン・ゴジラの映画を想起しながら読んでもらうと理解し易いように、あえて寄せてる感じです。
第1話は、ストーリー的にちゃんと完結して終わるので、読後感がスッキリします。

第2話『ぴぴぴ・ぴっぴぴ』は、タイムリーパーもので、これもSFっぽさがあります。
結末が、この後どうなったかは言うまでもない、というブツっと切れる終わり方です。

第3話『夜の安らぎ』は、バンパイヤものなので、SFっぽくないですね。
ラストは仄めかしというか、読者に推測させる終わり方です。

第4話『アタック・オブ・ザ・キラートマト』は、ゾンビものです(笑)
タイトルも同名の映画から引用していて、要するに映画オタクものですね。
結末は読者に丸投げで放棄しています(笑)

巻末の『著者あとがき』は、ほっこりした気持ちになります。
なんか私と似てるな(笑笑)
 
私は面白いと思いました。
ぜひ読んでみてほしいです。
感想を聞かせてください。





 
 
posted by eno at 17:39| 読書 | 更新情報をチェックする

2024年06月20日

真夜中のカーボーイ

山田五郎著『真夜中のカーボーイ midnight cowboy 』幻冬舎(2020年)を読みました。
五郎さんから直々に、お手紙付きで送られてきた本です。

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私が榎塾をしている DORADO GALLERY は、元々はアンティーク時計ショップです。
アンティーク時計が趣味の五郎さんとは、OLDTIMES /DORADO SALON が御縁で知り合いました。

私は、仲間たちと共に、熊野那智大社に作品を展示するプロジェクトを計画中です。
那智大社は、那智の瀧を御神体として祀る神社です。
私が那智の瀧に興味を持ったのは、根津美術館にある国宝『那智瀧図』を見て、強く心惹かれたからです。
その那智瀧図が、すごーく謎だらけの絵で、いつ誰が何のために描いた絵なのか不明です。
そこで「古今東西数々の名画の謎解きをしている五郎さんなら那智瀧図も謎解き出来ちゃう?」みたいな話を、DORADO GALLERY 店主の小原氏としていました。
五郎さんは西洋画が専門で、日本美術の解説は少なく、那智瀧図についての解説も無かったと思います。
「でもYouTubeで神護寺三像についても解説してるから、那智瀧図も解説できるんじゃないかな? それとなく訊いてみて」と小原氏を促したら、しばらくして、付箋が貼られた一冊の本が届きました。

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本に添えられた手紙には「付箋した箇所に私の那智大滝観を綴ってあります」と書かれていました。
先ずは付箋の部分を読みたい!と思う気持ちを抑え、順を追って読み進めることにしました。

表紙のタイトルを見て、COWBOYの訳が、カウボーイではなく、カーボーイであるとに気づきます。
ダスティン・ホフマン主演のアメリカ映画『真夜中のカーボーイ』(1969年)があります。
当時のユナイト映画の宣伝部長水野晴郎氏が「都会的な雰囲気を演出したかった(Car=自動車=都会の象徴)」との理由で日本語訳をカーボーイと表記しました。
この小説の中でも、映画『真夜中のカーボーイ』について書かれています。
また、主人公の俺が、車(カー)を運転する事も、この小説の重要な要素になっています。
それでは、ネタバレ多目になりますが、この小説の解説と、私の感想を書いて参ります。

主人公が語り部となって物語は進みます。
主人公は、自分の事を「俺」と言います。
五郎さんも、いつも自分の事を「俺」と言い、私にはその発音が「オデ」みたいに聞こえます(笑)
ですから、自分の事を「オデ」と言う60才手前の主人公は、2015年頃の五郎さんという設定です。
小説の終盤に書かれていますが、この物語を本にする構想が始まり、2020年に書き上がり、講談社を退社後に出版した、となる訳です。

この物語には、もう一人の主人公である『デコ』という女性が登場します。
『オデ』と『デコ』ダブル主演です。
本名は妙子ですが、アールデコが好きというキャラ設定なので、綽名がデコです。
アールデコ調のデザインが好きなデコは、ジタンというタバコを吸っています。
確かに、学生の頃、ジタンやゴロワーズなど、水色のパッケージの洋モクを吸う女子が流行っていました。

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私は、あの独特過ぎる匂いが好きになれず、軟弱にもマイルドセブンを吸っていました(笑)
(早々に禁煙して、現在は全く吸っていません)
デコは、モデルの山口小夜子さんに似ているという設定です。
デコとオデは、高校生の頃、大阪の中之島で出合いました。

高校時代の五郎さんは、大阪に住んでいました。
デコは、その時代の彼女という設定です。
1976年8月18日、当時高校三年生の2人は、大阪から南紀白浜までバイクで向かいますが、その途中、オデがやらかしてしまったある事件によって、離れ離れになってしまいます。
そして39年後の8月18日、東京で再会するのですが…

オデとデコのかけ合いは、ほとんど夫婦漫才です(笑)
読みながら脳内で関西弁の音声を生成するのですが、慣れない関東人には少々負荷がかかります(笑)
面白おかしく会話する2人なのですが、直面する問題は深刻です。
余命宣告を受けたデコが、最後に、あのとき行けなかった白浜に連れて行って欲しいとお願いしに来たのです。

2人が会って話している場所は、おそらくリーガロイヤルホテル東京のスイートルームという設定です。

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2人は、ホテルの正面玄関を出て、目の前の新目白通りを渡り、神田川に架かる豊橋を渡り、豊川浴泉という銭湯に行ったであろうと読み解けます。
その界隈は、私が生まれ育った街で、昔は出版社や印刷・製本工場が集まる工場地帯でした。
私の父の小さな工場も在りました。
神田川が度々氾濫して、その一帯も何度か水没しました。

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今ではすっかり様子が変わってしまった街ですが、富士山のペンキ絵が描かれた豊川浴泉は、昔ながらの昭和レトロの佇まいを残しています。

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こちらは、富士山ではなく、トゥーン湖と二ーセン山。
スイスの画家ホドラーの作品です。

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2人が初デートで観た、思い出の展覧会がホドラー展だったそうです。

デコからの形見分け、カルティエ製ミュスティオーズ・モデルAを貰います。

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9月の第1週、オデは、白浜旅行のスタート地点となる大阪に行きます。
前乗りして、デコとの思い出の地、中之島を歩いて巡ります。

私は、大阪には何度か行きましたが、街の風景は詳しく知りません。
しかし、中之島は、大好きな映画、濱口竜介監督作品『寝ても覚めても』の冒頭シーンで見て、とても強く印象に残っている風景です。
『寝ても覚めても』では、国立国際美術館から堂島川沿いの西側の先端近くの遊歩道までの風景が映ります。
一瞬、通天閣や淀屋橋からの日銀大阪支店の映像もインサートされます。
五郎さんの小説では、淀屋橋の駅から、府立図書館に向かいます。

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次は、水晶橋に向かいます。

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その次は大江ビルヂング。

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そして、中之島の東の先端に向かいます。
島の先端は、船の舳先のように尖っています。

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ここで、高校生時代のオデとデコは、サモトラケのニケごっこをしたのです。
映画『タイタニック』のニケごっこは、それよりも後です。

翌朝、いよいよ、白浜に向けて出発します。
デコが用意した車は、真っ赤なメルセデスSL550です。

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オデが運転するオープンカーは、白浜に向けて出発します。
ロードムービーに欠かせないのが、カーオーディオから流れて来るBGMです。
ここで、デヴィッド・ボウイのファイブイヤーズをかけます。
刺さりました。


私は五郎さんよりやや後輩ですが、世代は近いので、聴いていた音楽も似ています。
だとしても、私にとっても思い出の曲なので、最初にこれが来たかぁ~!と思いました。
アルバム『ジギースターダスト』を聴いて、次に『レッツダンス』も聴きます。
私は、ジギースターダストツアーには行けませんでしたが、シリアスムーンライトツアーには行きました。


私は、中学から高校くらいまでは、クラッシク音楽を中心に聴いていました。
その次がモダンジャズで、ロックはFMラジオで流れて来るのを聴く程度でした。
高校時代は体育会系だった私が、突然美術に方向転換してから、聴く音楽の傾向もガラッと変わります。
遅れを取り戻すかのように60~70年代のグラムロックやプログレッシブロックも聴き直し、聞き込みました。

この小説には、未成年の喫煙や万引きが描かれています。
五郎さんて、素行の悪い不良少年だったの? と思うかもしれません。
もちろん悪い事ですが、現在のコンプライアンス意識で判断できるでしょうか?
60~70年代に思春期を通過した若者たちには、何かしら覚えがあると思います。
私は、子供の頃には、父親が吸うタバコが煙くて大嫌いでした。
今だって好きではありませんが、中学高校時代には、カッコつけて、隠れて喫煙をしました。
当時の子供は、仲間からガキ扱いされる事が、たまらなく嫌だったのです。
ケンカも、仲間同士で度胸があるところを見せ合わなければ、ヘタレ扱いされる風潮でした。
現在は、そのようなダークなマウントの取り合いは、SNSのイジメに引っ越したのかもしれません。

もちろん大いなる勘違いであると前置きした上で申し上げると、同じ物でも、お金で買うのと、野生的能力を覚醒させて手に入れるのとでは、価値が違うという心理が、万引きにも影響しているのではないかと分析します。
例えば、お金で買える疑似恋愛と、それこそハートを盗むのとでは、全く別ものです。
魚屋で買える魚を、なぜ海まで行って自分で釣り上げたいのか?
あまり無責任なコメントはできませんが、野生動物のようなハンティング(狩猟採集)を何かしら別の形に変換して昇華しないと、都市化された規律の中だけに閉じ込められるストレスを開放できないのかもしれません。
わかんないけど。

2人は、当初の目的地であった白浜に、あっけなく到着します。
そこで、南方熊楠記念館に行こう、となります。

南方熊楠がどのような人物かは、今更説明するまでもありませんよね?
一つだけ言及すると『やりあて』という言葉を言った(造語した)人です。
偶然の域を超えたような発見や発明、的中のことを言い表した言葉が『やりあて』です。
それについては、長くなるので、また別の機会に解説したいと思います。

南方熊楠という名前ですが、南方は、本州最南端に突き出た南紀地方にい多い名字で、文字通りに南の方角を意味しています。
熊楠の熊は、熊野地方の熊で、楠は、和歌山県海南市の藤白神社の大楠(おおぐす)です。
大楠は、樹齢数百年を超える御神木で、藤白神社は熊野九十九王子の一つで、古来より熊野三山(熊野本宮大社、熊野那智大社、熊野速玉大社)への正門でした。
この南方熊楠という名前の意味が、次の展開を示唆しています。

古代の神話によると、神武天皇の東征は、九州の高千穂から国の中心地である大和国の橿原を目指した「神武東遷」なのですが、船で出発して、瀬戸内海を通り、先ずは大阪湾から上陸します。
方角的には、西から東に向かっての進行方向で進みます。
しかし、その上陸は、敵に阻まれて失敗に終わります。
そこで、神武天皇は、方角を変更して、リベンジを試みます。
その方角こそが南方です。
紀伊半島の南端を、西から回って、東側から上陸地を探します。
そこで探し当て(やりあて)たのが、那智の瀧の発見です。
海岸線を回っていくと、海から那智の瀧が見えたのでしょう。

オデとデコのリベンジも、大阪から紀伊半島の南端を回って、那智の瀧を目指すことになります。
紀伊半島の最南端を通過し、南下から北上に転じたところに橋杭岩があります。

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前記事の最後に紹介した無量寺に行く途中に、橋杭岩はありました。
その風景が、ピンクフロイドの『炎』の付録のポスカによく似ているのです。

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カーオーディオはピンクフロイドへ。



流れる曲に合わせて歌いながら那智勝浦に到着します。

リアルな設定で書かれている小説なので、実話がベースになっているとするならば、2015年の秋に、五郎さんは実際に那智の瀧に行った、ということになります。
そこで五郎さんがどんな体験をしたのか、瀧を目の前に、どう感じたのか、いよいよ付箋の貼られた部分が近づいて来ました。

その前に、2人は、那智山青岸渡寺別院である補陀洛山寺に立ち寄ります。

そこで、エマーソン レイク&パーマー『キエフの大門』の、death is life (死こそ我が生なり)という歌詞について語り合います。


そこで見たものは、補陀洛渡海船の実物大復元模型。

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那智参詣曼荼羅。

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その後、いよいよ那智の瀧に到着します。
ここから先は、ご自分で本を手に取って読んで欲しいです。

少しだけお話しすると、伊藤若冲の『象と鯨図屏風』の話が出てきます。

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像も鯨も体が大きい動物で、人間の可聴域を超えた低周波を聞き取ることができ、長距離のコミュニケーションが可能だといわれています。
那智勝浦の太地くじら浜公園には『くじらの博物館』があります。
デコが唱える那智の瀧と海との低周波説とは?

熊野古道を更に三重県側に進むと、花窟神社という、伊弉冊尊(イザナミノミコト)を祀った神社があります。
私もそこに行きましたけれど、凄い巨岩が在って、それが黄泉の国の入り口を塞いでいるそうです。
デコは、最後にそこに立ち寄りたいと言いますが…

読了後、未だ判然としないのは、この物語が、どこまで実話で、どこから作り話なのか、妄想なのか、記憶の改竄なのか…
絵画の謎を解くのと同様に楽しませてくれる作品です。

【お知らせ】
根津美術館で、7月27日(土)~8月25日(日)『美麗なるほとけ』-館蔵仏教絵画名品展-が開催予定で『那智瀧図』が展示されます。

最近、NHKの大河ドラマ『光る君へ』を観ていたら、平安時代から宋人が渡来しているので、もしかしたら鎌倉時代に渡来した宋人の絵師が『那智瀧図』描いた可能性もあるのではないか?などとも猜っています。
また久しぶりに観られる機会なので、よーく観て、じっくり考えてみようと思います。

【追加情報】
東京国立博物館
『創建1200年記念 特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」』
前期展示:7月17日(水)~8月12日(月・休) 
後期展示:8月14日(水)~9月8日(日)
国宝伝源頼朝像(でんみなもとのよりともぞう)
鎌倉時代・13世紀 京都・神護寺蔵
【展示期間】
前期展示 7月17日(水)~8月12日(月・休)



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2023年12月04日

異人たちとの夏

【訃報】昨日(12/2)脚本家の山田太一さんがお亡くなりになられたそうです。
哀悼の誠を捧げます。
新潮文庫『異人たちとの夏』の装画を手がけたのは1991年でした。
追悼に読み返してみたいと思います。
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2023年06月06日

街とその不確かな壁2・勝手に脳内映画化

私は小説を読むとき、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚を想像しながら読んでいます。
可能な限りリアルに、脳内(想像)で映画化しています。

前記事では村上春樹著『街とその不確かな壁』のレビューを書きました。
今回は、勝手に脳内映画化して、その仮想ロケ地の聖地巡礼情報を書きます。

第一部・第1章
オープニングシーンは、ぼくが住む街。
若いぼくときみが、川沿いを散歩しながら、想像上の街の話を始めます。

ぼくが住む街は、小説には地名が書かれていませんが、おそらく愛知県豊橋市だと分析しました。
オープニングシーンは、豊橋市の音羽川堤をロケ地にしたいと思います。

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第一部・第2章
きみが住む街に行きます。
きみが住む街も、小説には地名が書かれていませんが、おそらく愛知県名古屋市だと分析しました。
にぎやかな市街地の様子は、名古屋駅付近の高層ビル街を撮影したいと思います。

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きみの街で二人がデートするシーンは、名古屋市ではなく、あえてロケ地を変えて茨城県つくば市で撮影したいと思います。

公共の植物園は、つくば国立科学博物館実験植物園で撮影したいと思います。

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植物園の筑波大学側に大きな温室があり、通りを渡って隣の筑波大学の敷地に入ると、静かなカフェがあります。

サザコーヒー筑波大学店。

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コーヒーと、林檎のタルトを注文します。

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第一部・第3章
想像上の街のシーンです。
壁に囲まれた街の周りは林檎の林で、冷涼な地方のようです。
映画撮影なら、殆どがセットとCGをを組み合わせて映像化するしかありません。
着想のヒントになったかもしれないドイツのネルトリンゲンは、遠すぎて聖地巡礼に行くのは難しいです。
なので、国内で聖地になりそうなところを探してみましょう。
小説を読みながらイメージした煉瓦の壁に囲まれた街は、刑務所です。
たとえば、奈良少年刑務所(旧奈良監獄)のような。



壁に囲まれた街は、北に一箇所だけ門があります。
街の中を川が流れていて、南の溜まりから、外に脱出することができます。
その条件に合致しているのが前橋刑務所です。
北に門があり、西の塀に沿った川が南に流れていきます。

前橋刑務所
映画『影踏み』のロケ地。




第一部・第11章
「ぼくらは地下鉄の駅の近くの、小さな公園で待ち合わせている」とあります。
その公園には、いくつかの遊具と、水飲み場と、藤棚の下にベンチがあります。
どこの街にでもある、ごく平均的な児童遊園です。
なので、皆さんが、自分が住む街にいくつかある公園を想い浮かべればいいのです。
私が選ぶのであれば、東京メトロ東西神楽坂駅に近い、新宿区立白銀公園です。
私にとって、子供の頃よく遊んだ、馴染み深い、思い出がいっぱいの公園です。
この公園は、そんなに小さくありませんが、藤棚の下のベンチが感じいいです。

第一部・第19章
ぼくは、地元の大学ではなく東京の私立大学に進学します。
地元の大学は名古屋大学東山キャンパス文学部、東京の私立大学は早稲田大学早稲田キャンパス文学部

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ぼくは新宿区のアパートに住み始めます。
名画座は、今はもう無い神楽坂(飯田橋)の佳作座
都営プールは、新宿区立ならば、新宿スポーツセンターですが、都営ならば、千駄ヶ谷の東京体育館屋内プールです。

第一部・第25章
壁に囲まれた街の、南の溜まりに行きます。
溜まり(沼)に雪が降っています。
冬の五色沼(福島県)を想像しました。

第二部
福島県のZ**町に行きます。
この町は、福島県の南会津町で決まりです。

南会津町に実在する町営図書館は近代的な建物です。
古い酒蔵の木造建築であれば、会津酒造があります。
しかし、あえてロケ地を変えて、会津若松市の会津酒造歴史館の建物で撮影したいと思います。

【追記】友人からの情報ですが、古い木造二階建ての図書館として、滋賀県にある江北図書館が、雰囲気があって、Z**町図書館の参考になっているのではないか?と思いました。
洋風建築ではありますが、玄関が引き戸という条件は合っています。
これに似た二階建て洋風木造建築として、南会津町には旧南会津郡役所があります。
洋風建築といっても、裏手のほうは和風の趣があります。
それから、南会津町にある和泉屋旅館も、図書館のイメージの参考になっていると思います。
また、壁に囲まれた街にも図書館が登場します。
これという特徴が無い、古い石造りの建物と書いてありますね。
入り口は重い木製のドアで、入ると天井が高いそうです。
部屋は木製のドア、すり減った杉材の床板、縦長の窓に曇りガラス。
2つの図書館、壁に囲まれた街は古い洋風石造りで、Z**町は古い酒造で和風木造り。
そして、参考までに、酒蔵を図書館にしようというクラウドファンディングもあります。

Z**町の名前のない喫茶店は、南会津町にある CAFE JI MAMA です。
ブルーベリーマフィンは、会津若松市のユーフォリアというお店で食べられます。

子易さんのお墓はどこでしょう?
町外れというより、少し離れた大内宿の法正寺の石段を上がると、子安観音堂があり、その裏手に墓地があります。
あるいは、町外れに、真言宗常楽院に、子安観音堂のマリア観音があり、その裏手にも墓地があります。
しかし、常楽院には、石段がありません。

本を片手に、これらの聖地を巡ってみるのも楽しいでしょう。

勝手に脳内キャスティング

小説の登場人物を、知っている俳優で例えたら誰みたいだと想像しながら読んだか?

主演の『ぼく』と『私』は、既に全記事に書いたように、板東龍汰と西島秀俊です。

1歳年下の彼女『きみ』は、第4章26ページに、その特徴が書かれています。
『きみはとても美しい少女だった。少なくともぼくの目にはそう映る。小柄で、どちらかといえば丸顔で、手の指がほっそりしてきれいだ。髪は短く、切り揃えられた黒い前髪が額にかかっている。丁寧に吟味された陰影みたいに。鼻は真っすぐで小さく、目がとても大きい。一般的な顔立ちの基準からすれば、鼻と目の均衡がとれていないということになるかもしれないが、ぼくは何故かその不揃いなところに心を惹かれる。淡いピンク色の唇は小さく薄く、いつも律儀に閉じられている。大事な秘密をいくつか奥に隠し持つみたいに。』
目が大きい美少女であれば、桜田ひよりです。



『門衛』役は、怖いイメージなので、顔が怖い、山西惇です。



Z**町図書館の『添田さん』役は、眼鏡をかけた、いくぶん骨ばった顔立ち、鼻が小さく薄い、髪を後ろで束ねたている、30代半ば、さっぱりとした顔立ち、知的な印象、身長160センチ、細身、姿勢がよく、背筋が伸びて、歩き方がきれい、学生時代にバスケの選手、という条件から、仲間由紀恵しか思いつきません。



幽霊の『子易さん』役は、穏やかなバリトンの声、肥満気味の老人、という条件で、小野武彦です。



『喫茶店の女主人』役は、30代半ば、ほっそりした体、とりたてて美人でもない、という条件では想像が難しいのですが、読んでいて何となく、瀧内公美をイメージしました。



『イエローサブマリンの少年』役は、デビュー当時の初々しい神尾楓珠をイメージしました。



そして、映画化するのだとしたら、音楽が必要です。
小説の中に音楽が出てきて、その曲名が書かれている場面は、それを挿入曲にします。
例えば、初めて名前のない喫茶店に入ったときに、店内に流れているBGMが、デイヴ・ブルーベック カルテットの Just one of those thingsであったり。



別の日、喫茶店では様々なジャズの名曲が聴こえてきます(ここでは省略)。

部屋でシーツにアイロンがけが終わって、FMラジオから流れてきた音楽が、イ・ムジチ合奏団のヴィヴァルディ:ヴィオラ・ダモーレ協奏曲であったり。



別の日、アイロンがけをしている時に聴こえてくる美しいメロディーが、ボロディンの 弦楽四重奏曲だったり。

そして、テーマ曲、サウンドトラックは、どんな音楽がいいでしょう?
※つづく(追記)→ 続きを読む
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2023年05月28日

街とその不確かな壁

村上春樹著『街とその不確かな壁』を読みました。
発売直後に購入して、先に一気読みした友人と、FBのメッセージで感想を話し合いながら、少しずつ読み進めて、約1ヶ月かけて読了しました。
既に読み終えた友人が「主人公の『私』は西島秀俊さんしか思い浮かばない」と言うので、私も途中から、映画『ドライブマイカー』の家福(西島秀俊)を思い浮かべながら読みました(笑)
西島秀俊のセリフ棒読み感が、村上春樹の小説にマッチしていて、もしこの『街とその不確かな壁』を映画化するのなら、主人公の『私』は西島秀俊しかない、と思いました。
しかし、小説は三部構成で、『私』になるのは第二部からです。第一部では、未だ17歳の高校生『ぼく』なので、その部分は他の若い役者をキャスティングしなければなりません。
西島秀俊が17歳だったのは1988年で、まだデビュー前です。
西島秀俊の若い頃の顔を見ると、二宮和也に似ているのですが、二宮くんもそんなに若くありません。
もっと若い俳優だと、坂東龍汰が似た雰囲気だと思います。

第一部は、空想上の『壁に囲まれた街』と『この実際の世界』が、交差しながら描かれます。

村上春樹が、第一部の壁に囲まれた街の原案となる短編の着想を得たのは1980年かそれ以前のドイツ旅行中だったそうです。
その当時のドイツといえば、ベルリンの壁があった時代ですから、壁に囲まれた街はベルリンがモデルなんじゃないかと思ってしまいそうですが、小説を読んでみるとそんな雰囲気ではなくて、もっと田舎の小さな街を描写しています。
その情景描写に当て嵌まる街を探してみると、南ドイツのネルトリンゲンという中世の城壁都市が浮上してきました。
このネルトリンゲンという街は、漫画『進撃の巨人』のモデルになった街ともいわれていて、尚且つ、隕石落下で出来たクレーターの中にある街でもあり、アニメ映画『君の名は。』の糸守町のモデルなんじゃないか?とも思ってしまいます。
そして、猫の街でもあります。

村上春樹が、その短編を自身でリライトして『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』を発表したしたのが1985年です。
その、世界の終わりを再び自身でリライトしたのが、この小説の第一部で、その後(第二部・第三部)が書き加えられました。

第一部で、この実際の世界のぼくは、海に近い静かな郊外の住宅地に住んでいます。
そこから電車を二度乗り換えて1時間半ばかりかかる大きくて賑やかな都市の中心部に、1歳年下の彼女『きみ』が住んでいます。
きみの家の近くに地下鉄の駅があるので、最初は東京の都心部なのかと思いましたが、その後で、東京ではないとわかります。
ぼくは、最初は地元の大学に進むつもりでいたけれど、きみ(の思い出)から物理的距離を置くために、あえて東京に出て行きます。
きみの街には公共の植物園があり、その植物園の温室の隣にはカフェがあります。
そのカフェでコーヒーと林檎のタルトを注文します。
また『きみの家の近辺には川も流れていなかったし、もちろん海もなかった』と書かれています。
つまり、街の中心が川や海から離れている、ということです。
それらの条件で、きみが住む街を絞っていくと、札幌市、名古屋市、のどちらかになります。

札幌市には地下鉄があります。
札幌市には海がありません。
川は、豊平川がありますが、あまり目立つ存在ではありません。
北海道大学植物園があり、温室の隣にCAFE DE MADELというカフェがあります。
第二部の後半で登場する喫茶店の女店主は、私に、札幌から来たと話します。
1歳年下の彼女と、喫茶店の女店主を重ね合わせる目的で、札幌が仄めかされている、と考えられなくもありません。
しかし、それを聞いた私は、もし同郷ならば札幌(あるいは北海道に対して)に反応するはずなのに、スルーしました。
なので同郷である可能性は低いです。

名古屋市には地下鉄があります。
名古屋市には名古屋港があり、庄内川もありますが、いずれも市の中心ではなく、市の外周部にあります。
名古屋市内には、名古屋大学の隣に東山動植物園があり、その温室の隣にはガーデンテラス東山というレストランもあります。
あるいは名城公園フラワープラザもあり、温室の隣にDEAN & DELUCAというパン工房併設型ベーカリーカフェがあります。
あるいは名古屋市緑化センターもあり、温室の隣にヌンクヌスクという古民家カフェがあります。
村上春樹は『色彩を持たない多崎つくると、その巡礼の年』で名古屋を舞台に描いているので、名古屋をよく知っているはずです。
きみが住む街は、名古屋市である可能性が高いです。

きみが住む都市を名古屋市だと仮定すると、ぼくが住む郊外は、そこから電車を二度乗り換えて1時間半かかる海辺の静かな住宅地です。
愛知県内なら豊橋市、三重県側なら津市になります。
きみが中心部で、ぼくが郊外、という表現をしているので、おそらく豊橋市でしょう。

ぼくは、高校を卒業して、東京の私立大学に進学します。おそらく早稲田大学の文学部で、早稲田から近い新宿区の神楽坂(新潮社の近辺)に住み始めたと予想されます。
その後就職して、アパートを移り、この実際の世界のぼくはもう45歳の中年男になります。



第二部では、中年男である主人公は『私』に変わります。

私は東京都中野区の賃貸アパートで独り暮らしをしています。
ある夢を見たことがきっかけで会社を辞め、福島県のZ**町という地方都市の図書館の図書館長になり、その町に移り住みます。

Z**町のモデルになった街はどこか?
第二部29章の中頃(204ページ)に、福島県Z**町について書かれています。
『会津若松駅からローカル線に乗り換えて、一時間ほどでそこに着く、人口は一万五千人ほど』
実在する町では、福島県南会津町がこの条件に当て嵌まります。
そして、南会津町にある CAFE JI MAMA という喫茶店が、Z**町の名前の無い喫茶店のモデルになっている喫茶店です。
実在する南会津町図書館は、コンクリート製のビルですが、Z**町図書館は、元は古い酒蔵の木造建築を改装したことになっています。
南会津町には古い酒蔵もいくつかあり、近くに川が流れ、林檎園もあります。
南会津町の北に会津磐梯山があり、その向こう側に五色沼があります。
想像上の街である壁に囲まれた街に、南の溜まりという沼が出てきます。この世のものではない、あの世の景色として描写されているのですが、五色沼を想起させます。
その手前に猫魔ヶ岳があり、猫石があります。
猫魔ヶ岳の麓に猫魔温泉があり、星野リゾートがあります。
村上春樹が執筆のために会津近辺に滞在していたとすれば、猫魔温泉に泊まって、猫魔ヶ岳に登って、猫石を見たかもしれません。
これらが聖地化されたなら、ハルキストたちの巡礼の年になるでしょう。

第三部は、また壁に囲まれた街に戻ります。

以上は客観的分析です。
以下は主観的感想です。
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posted by eno at 19:03| 読書 | 更新情報をチェックする