2018年07月10日

機会費用と御縁

読書の話ですが、今更ながら中上健次を読みました。
たぶん、自分には相性が悪いだろうと、読まずにそう決め込んでいました。
で、実際に読んでみると、やはり、思った通り相性が悪いのです。

先ずは「18歳」を読んで、18歳くらいの男の子は、精液ばっかり出しているのは、まあわかります。次に「19歳の地図」を読んで、公衆電話が、今だったらインターネットなのだろう、とか思ったりしました。それで、それなりに面白い部分もあるのですが、でも、もういいと思いました。しかし、もう一つだけ読んでみようと思って「千年の愉楽」を読み始めました。ところが、ちっとも読み進まなくて、誰にも感情移入できなくて、途中で読むのをやめました。

だったら感想を書く必要も無いのですが、ただ、単に面白くないからスルー、というのとも少し違います。もしかしたら、もう少し我慢して読めば面白いのかも知れない、とも思うのです。しかし、結論としては、読まなくていいと判断しました。それが「相性が悪い」ということなのです。

本を読むには、それなりに時間を費やします。もし、この本を読まなかったら、その機会費用を別の何かに交換できます。でも、それは読んでみなくちゃわからないことなのです。ですから、それらは全て御縁なのです。
 
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posted by eno at 00:08| 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月01日

詩羽のいる街

山本弘さんの小説「詩羽のいる街」も紹介しておきます。
SF作家として有名な山本さんが、2008年に書いた、最初のSFではない小説です。2008年は、日本でiPhoneとtwitterとFacebookが開始した(未だ普及していない)年で、その頃はテレビだって未だブラウン管だし、アナログ放送の時代です。だから、スマホではなく携帯電話です。SNSではなく2ちゃんの掲示板やブログです。でも、オタクやネット界隈の現象は、その後の10年を先見したように描かれています。

第一話〜第四話まで、全部で四話、四人の登場人物の視点で語られます。
美大を出たばかりで、漫画家を目指している青年。自殺しようとしている、女子中学生。正体を隠してネットを荒らしたり、悪さをする男。最後の一人はネタバレになるので正体を明かせませんが、出版社関係の女。一つの地方都市で、偶然に係わり合う彼らと、その他にも何人もの登場人物が絡み合っていて、それらの中心には、常に詩羽という名の女性がいます。

詩羽がどこから来て、どこへ行くのか? 詩羽が何者なのか?
それらは殆ど説明されていません。でも、詩羽が今、何を考え、何をしているのかは、明確に説明されています。詩羽は謎めいているようでいて、合理的です。詩羽がやっている事は、見掛け上は複雑ですが、行動原理は単純明快です。特技ともいえる才能と、少々都合のいい運が味方していますが、現実的に実行が不可能ではないと思わせるアイデアに、目から鱗が落ちます。

読んでよかった、何かヒントを貰ったような、ポジティブになれる読後感です。
余談ですが、2013年に、百田尚樹さんが「夢を売る男」を書きましたが、そのアイデアが「詩羽のいる街」の中の一つのエピソードをヒントにしたのではないか? と思わせてしまうんですよね。オマージュってやつですか(笑)


posted by eno at 21:44| 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月24日

世界が終わる前に+君の知らない方程式

君の知らない方程式.jpg

山本弘さんの小説「BISビブリオバトル部・第三部・世界が終わる前に」を読みました。
つづけて、ウェブに特別掲載された最終巻「第四部・君の知らない方程式」を読みました、読了です。

★「 東京創元社のウェブページ(2017.02.28)

山本弘さんは、筋金入りのオタクですね、深い読書愛を感じます。そして、書きたいから書く、損得勘定なんて無いのです。BISビブリオバトル部シリーズは、自分が読んで影響を受けた本を、これでもかと紹介しています(他人の本を宣伝している事にもなります)。そして、読書を通して哲学することを説いています。若い人たちに、もっと本を読んで欲しい、そんなメッセージが込められているから、ライトノベルのスタイルで書かれています。普通なら、第一巻を試し読みで無料公開して、その後は有料にするはずですが、これは逆です。最終巻を無料公開しました(最後まで読んでくれたファンに最終回をプレゼントです)。

私は、そもそも最初から、考え方が山本さんとよく似ていて(原体験が似ているのかな?)共感点が多いのです。そして、山本さんの小説から多くの影響を受けました。「アイの物語」の主人公「IBIS」に惹かれ、アンドロイドをイメージした絵も描きました。どの作品を読んでも、知識が豊富です。更に、既存の価値観に固執せず、どんどん新しい流れに乗っていきます。

これまで「アイの物語」が一番好きだと思っていましたが、この「BISビブリオバトル部」を、もっと好きになりました。冒頭から主人公の空に惹かれ、話の展開にぐんぐん引き込まれて、あれこれ考えさせられ、そしてクライマックスに向って、感情が昂ぶりました。登場人物たちと一緒に、思春期に返って悩みました。

そして最後、最後の最後まで驚かされます。

過去記事リンク
★ 2017年05月30日「 2・幽霊なんて怖くない 」 ★ 2016年11月01日「 1・翼を持つ少女

あと、ついでと言ってはなんですが、先月観たSF映画の記事をアップし忘れていたので、フェイスブックの投稿をリンク貼っておきます。
★ 2017年5月19日「 映画「メッセージ」を観ました。
posted by eno at 11:19| 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月30日

幽霊なんて怖くない

山本弘著『BISビブリオバトル部2幽霊なんて怖くない』を読みました。
昨年(2016年11月01日)ご紹介した「 翼を持つ少女 」の続編です。

岡山・倉敷の旅行中に、数冊の本や漫画を持ち歩いて読んでいました。
okayama1.jpg

さて、今回のビブリオバトルのテーマは「戦争」です。
中学高校生の若者たちが、読書を通して、戦争に向き合います。
戦争の本質を伝える本は、フィクションなのか? ノンフィクションなのか?
真実とは、科学的に正しい事なのか? ゲームや漫画は不謹慎なのか?

著者の意図は、青少年の時期に、情報リテラシーを学んで欲しい、自分の頭で考えられる大人になって欲しい、そのためのヒントを提供することです。なので、若者(少年少女)をターゲットに、読み易いライトノベルのスタイルで書かれています。でも、むしろ、本当に読んでほしいのは、自分の頭で考えられなくなってしまった大人たちかも知れません。

タイトルの「幽霊なんて怖くない」は、前半のエピソードで、夏合宿の夜、怖い話をテーマにしたビブリオバトルの中で問題提起される言葉です。読んでもらえれば解りますが、本のタイトルにもなっているように、大切な意味を含む言葉です。

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漫画は「響」。


 
posted by eno at 11:12| 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月23日

騎士団長殺し/村上春樹

村上春樹著「騎士団長殺し」を読みました。
この作品の主人公は絵描きです。私も絵描きなので、自分に重ね合わせました。著者がどの程度絵描きを理解できているかというと、かなりよく理解していると思いました。絵描きに興味のある人は、是非読んでみてください。

【笑】
この作品は、これまでの村上作品と比較しても、かなり面白いです。しかし、途中で「え???」という感じで揺さぶりを掛けられます。そこでついていけない人は、ついていけないかも知れません。著者のユーモアセンスが、笑っていいものかどうか、どうかしちゃったのか、不安になるレベルで戸惑います。でも、読み進めて行くうちに、わかる人にはわかります。イデアやメタファーを読み解くには、センスと、多少の教養も必要です。

【音楽】
村上作品の特徴として、音楽(曲名)がちょいちょい出てきます。この作品も例にもれず、作中でレコードがあれこれかかるのですが、最初は、興味を持って、ネットで検索して、それらをBGMに聴きながら読みましたが、途中からもう面倒になってきてスルーしました。何事もやり過ぎると飽きられますよ。

【絵】
絵に関しては、小説なので、文章で描写されるだけで、画像的には読者が想像するしかありません。そこで読み手の差が出るかも知れません。たとえ美術に詳しい人でも、自分が脳内に絵を描けるか? というと、なかなかそこまでの絵心は無いかも知れません。つまり、見たことの無い名画を想像しようと思っても、その人の画力のレベルでしか想像できないのです。普通の人(絵の素人)であれば、何が描いてあるか、具体的な説明に囚われて、どうしても駄作しか想像できないでしょう。絵描き(プロ)の想像力だと、何が描いてあるかは、あまり問題にしません。それよりも、名画であるとか、構図が完璧だとか、見た人の感想を優先して、絵の雰囲気から想像します。読み手の能力が問われる小説です。

【無い】
全部読み終わってから気が付くことですが、主人公には名前がありません。
きっと名前はあるのでしょう。しかし、主人公である「私」の一人称で語られる物語の中に、その名前は最後まで語られませんでした。顔の無い男で始まり、名前の無い主人公、実体の無いイデアとメタファー。 無いものばかりです。
「在る」は実体ですが、「無い」は概念です。
絵を描いていると実感することですが、「在る」は描けますが「無い」を描くのは、とても難しいことです。


posted by eno at 22:35| 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする