2017年07月01日

詩羽のいる街

山本弘さんの小説「詩羽のいる街」も紹介しておきます。
SF作家として有名な山本さんが、2008年に書いた、最初のSFではない小説です。2008年は、日本でiPhoneとtwitterとFacebookが開始した(未だ普及していない)年で、その頃はテレビだって未だブラウン管だし、アナログ放送の時代です。だから、スマホではなく携帯電話です。SNSではなく2ちゃんの掲示板やブログです。でも、オタクやネット界隈の現象は、その後の10年を先見したように描かれています。

第一話〜第四話まで、全部で四話、四人の登場人物の視点で語られます。
美大を出たばかりで、漫画家を目指している青年。自殺しようとしている、女子中学生。正体を隠してネットを荒らしたり、悪さをする男。最後の一人はネタバレになるので正体を明かせませんが、出版社関係の女。一つの地方都市で、偶然に係わり合う彼らと、その他にも何人もの登場人物が絡み合っていて、それらの中心には、常に詩羽という名の女性がいます。

詩羽がどこから来て、どこへ行くのか? 詩羽が何者なのか?
それらは殆ど説明されていません。でも、詩羽が今、何を考え、何をしているのかは、明確に説明されています。詩羽は謎めいているようでいて、合理的です。詩羽がやっている事は、見掛け上は複雑ですが、行動原理は単純明快です。特技ともいえる才能と、少々都合のいい運が味方していますが、現実的に実行が不可能ではないと思わせるアイデアに、目から鱗が落ちます。

読んでよかった、何かヒントを貰ったような、ポジティブになれる読後感です。
余談ですが、2013年に、百田尚樹さんが「夢を売る男」を書きましたが、そのアイデアが「詩羽のいる街」の中の一つのエピソードをヒントにしたのではないか? と思わせてしまうんですよね。オマージュってやつですか(笑)


posted by eno at 21:44| 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする