山崎貴監督作品、映画『ゴジラ-1.0(マイナスワン)』を観ました。
公開は11月3日からで、私は11月9日に観ました。
感想を文章に纏めるまでに、2週間近く経ってしまいました。
結論から先に言うと、どなたにもおすすめ出来る、非常に良く出来た作品です。
私は、山崎貴監督の『always三丁目の夕日(2005~2012年)』シリーズが大好きです。
初期作品の『リターナー(2002年)』や、最近では『アルキメデスの対戦(2019年)』も好きです。
デビュー作の『ジュブナイル(2000年)』と『リターナー』を見返してみました。
当時、衝撃を受けたVFXのクオリティーは、今でも見劣りなく、十分に面白いです。
山崎監督は、ヒット作も多い一方で、マイナス評価も多い監督です。
映画を芸術と娯楽で分けるなら、山崎監督の作品は、いずれも後者です。
子供向けの作品が多く、大人が観ると、ちょっと稚拙に感じるものも多くあります。
また、いろんな映画のパクリ(どっかで見たような場面)も多い印象です。
今回のマイナスゴジラも、しっかりとオマージュ(パクリ)をやっています。
これはネタバレには入らないと思うので、あえてお伝えしておきます。
クリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク(2017年)』をパクリまくってます(笑)
マイナスゴジラに関しては、ネタバレしたところで、マイナスにならないと思います。
そもそも観ていて先の展開が全部読めて、いい意味で読んだ通りに展開してオチます。
なので、むしろ潔くネタバレしてから観たほうが、より楽しめるかも知れません。
笑笑
ゴジラとは、どんな怪獣なのか?
ハリウッド版のゴジラや、シン・ゴジラが、ゴジラの定義を更新する中で、マイナスゴジラは、初代ゴジラ(1954年)の設定に戻っています。
その初代ゴジラも、実は1953年のアメリカ映画『原子怪獣現わる』のアイデアをパクっています。
全てのゴジラに共通するのは、原水爆の実験です。
ゴジラは戦争のメタファーであり、マイナスゴジラの銀座襲撃は、原爆投下のメタファーです。
広島の原爆資料館で見た、きのこ雲を下から見上げた写真を想起させました。
国対国の戦争は原爆投下で終わったのかもしれませんが、俺(個人)の戦争は終わりません。
仲間を殺され、愛する人を殺された事への、復讐心は、報復する事でしか終わりません。
それは、敵に対する憎しみよりも、仲間を見殺しにして逃げた、愛する人を守れなかった、そのような自分自身に対して決着を付けなければならない、先に進めない、という心の傷です。
主人公の敷島は、飛行機が故障したと嘘をついて特攻作戦から逃げ、ゴジラに対しても差し違える覚悟で攻撃できず、その場逃れをしてしまいます。
そうやって自分だけ助かって、仲間を犠牲にしてしまった罪悪感を抱えて帰国すると、東京は焼け野原で、両親は殺されていました。
隣のおばちゃんに、あんたたちが戦って守ってくれなかったからこうなったと責められます。
自分が戦わずに生き延びて戻って来た意味が瓦解します。
特攻作戦は、国の命令によって死ぬ事を強要された、人権(人命)を無視した作戦です。
それでは、自分の戦争ではなく、国の戦争に利用されているだけにすぎません。
それに対して、自分自身の戦争は、差し違えても敵を倒すという、個人的な戦う目的が生じるのです。
『アルキメデスの大戦』の冒頭で、撃墜された米軍機から米兵がパラシュートで脱出して、それを米軍水上艇が救出する場面があり、大和の搭乗員が唖然としてそれを見ています。
日本軍側の価値観だと「戦えば死ぬ」が当たり前だから、それを驚きの目で見ています。
戦闘機の脱出装置は、第二次世界大戦中に実用化したのは一部のドイツ軍機だけで、米軍機にもありません。
しかし、装置は無くても、自力で外に出てパラシュートで降下して助かったパイロットもいたようです。
要するに、アメリカ人は、脱出して生き延びるのを恥じとは思っていなかったけれど、日本人は生き恥を晒すと考えていたから脱出しなかったのです。
だから、日本軍にもパラシュートはありましたが、逃げる目的では使いません。
クライマックスに向けて登場させた幻の戦闘機『震電』にはときめきました。
もちろん、設計時には射出式脱出装置は装備されていません。
当時の日本には、まだその技術は無かったので、もし、脱出装置を取り付けたいのならば、ドイツ軍機(ハインケル)の操縦席を流用して取り付けるしかないだろうと思います。
キャスティングですが、浜辺美波はとても良かったです。
秋津の役は、佐々木蔵之介も良かったのですが、個人的には堤真一にやらせたかったですね。
神木隆之介、佐々木蔵之介、監督は〇之介つながりに拘ったのでしょうか?(笑)
昨今、上映時間が3時間超と長い作品が増えている中、2時間5分にまで切り詰めているのが気持ちいいです。
行間に滲ませるみたいな間をとってない、さっさとセリフて説明しちゃう。
謎も無い、考察の必要も無い、後腐れなくさっぱりと終わります。
劇場を出る時は、きれいさっぱり湯上がり気分です。
もしかすると、涙が枯れるほど、これでもかと泣かされたから、さっぱり湯上り気分なのかも知れません。
ラストは不気味で不穏な終わり方でしたが、それは仕方ないですね。
ゴジラの死体は、比喩的に放射性廃棄物ですから、処理には10万年が必要というメッセージです。
最後に私が指摘しておきたいツッコミどころは、水深1500メートルの海上の戦いのシーンです。
水深が深いわけだから、ゴジラは、泳いでいる姿勢をとっているわけです。
なのに、突然、ゴジラが立ち上がります。
立ち上がる姿勢が取れるためには、水深の浅い海底が必要です。
笑笑
老若男女、理屈抜きに万人に楽しめる、よく考えて作り込まれた作品です。
お見逃しないように、今すぐ劇場へ。
それと、まだ上映中の『ザ・クリエイター(創造者)』も観たので、それについても、後ほど追記します。
【11月23日】お待たせしました、追記です。
『ザ・クリエイター(創造者)』を観ました。→続きを読む